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認知症は家族も危ない!
莫大な損害賠償に備える補償は?


「認知症高齢者の運転で自動車事故」「認知症の人が電車にひかれ、鉄道会社が遺族に対して損害賠償を請求」など、「認知症」関連の事故の報道が増えてきました。
高齢の親や、将来の自分がふと思い浮かんで心配になるという声もよく聞かれますので、今回はそれらのリスクと備えについてお話しします。

● 一家にひとつは「個人賠償責任保険(特約)」
認知症で気がかりなのは、事故を巻き起こして損害賠償請求されるケースです。たとえば、徘徊して線路内に立ち入って電車にはねられてしまった場合、鉄道会社は合計で数百万~数千万円にのぼる損失(振り替え輸送にかかった費用・人件費、運休による機会損失、設備の修理費など)を請求してきます。本人が死亡したり、認知症などで責任能力がない場合は、その家族が支払いを求められます。
「お葬式を終えて悲しみに暮れている時に、損害賠償請求?!」とは酷な感じもしますが、鉄道会社も営利企業(株式会社)なので、会社の損失は放置できないのです。
その対策には「個人賠償責任保険(特約)」が有効です。日常生活上で他人の身体・財物に損害を与えた場合の賠償責任をカバーする保険で、保険金額の上限は「5,000万円」「1億円」「2億円」「3億円」「無制限」のように設定できます。
自動車、火災、傷害などの損害保険に「特約」として付けられるので、親御さんの損害保険のどこかに付いているか、そして上限額はいくらなのかを確認してみてください。
加えて、ご自身の個人賠償責任保険も確認しましょう。前述の線路内に立ち入って電車にはねられた事故の裁判(一審)では、同居の妻だけでなく、結婚して離れて暮らしていた子にまで「監督責任」(≒賠償責任)があると認められたからです。この場合、子が個人賠償責任保険に入っていれば、保険でカバーできることがあります。

● 高齢ドライバーは「自動車保険」のココに注目!
「徘徊」といえば歩き回るイメージですが、車に乗って徘徊し、本人が意識しないままに人をひいてしまう事故も起きています。アクセルとブレーキの踏み間違いや、高速道路の逆走なども、認知症との関連性が疑われています。
警察庁によれば、平成27年に75歳以上の運転者が起こした死亡事故458件では、「認知症の恐れあり:31件(7.2%)」、「認知機能低下の恐れあり:181件(42.2%)」が多くを占めています。
いつまでも元気で車を運転できる人はいないので、高齢の親御さんとは「車を運転せずに生活する」方法を考える必要があります。どうしても車が必要なうちは、必ず「自動車保険」の加入内容を確認しましょう。前述の「個人賠償責任保険」では自動車事故は補償されませんし、強制で加入する「自賠責保険」は最低限の対人補償(死亡の上限額:3,000万円など)で、物損事故の補償額は「ゼロ円」だからです。
自動車保険は“①他人のための保険”と“②自分のための保険”に分かれており、この場合に大切なのは“①他人のための保険”である[対人賠償保険][対物賠償保険]の2つです。
一方、“②自分のための保険”には、運転者や同乗者の補償(人身傷害補償保険など)と、自分の車の補償(車両保険)がありますが、認知症や認知能力低下の恐れがある方が起こした事故の場合は、保険金を受け取れない可能性が高いのです。

他人を事故に巻き込めば、事故の当事者だけでなく、家族の幸せまで奪いかねません。
親御さんと離れて暮らしている方は、帰省時に「車を運転しなくても生活できる」環境づくりについて話すきっかけを考えておきませんか。

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