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■有山佳伸 「ファイナンシャルプランナーのマネー講座」

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 もらえる? もらえない?
 遺族年金の分かれ目とは


一家を支えている人が亡くなった場合、残された家族の生活を支えてくれるお金が遺族年金です。遺族年金は、亡くなった人の働き方や収入、お子さんの人数などによって、支給される金額が変わります。
また共働きの妻が夫を亡くした場合でも、妻の収入によっては遺族年金を受給できるケースがあります。今回は、遺族年金を受給できるかどうかの基準をご紹介します

● 加入してから25年未満の死亡は、25年加入していたとみなしてくれる
遺族年金は、老齢年金と同じく「2階建て」の制度です。亡くなった方が自営業者であれば、1階部分に当たる遺族基礎年金が受け取れ、会社員の場合は2階部分の遺族厚生年金も上乗せされます。遺族基礎年金では「配偶者と18歳未満の子」が遺族(年金受給者)に該当し、遺族厚生年金では「妻、子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母」のいずれかの方が年金受給者になります。
遺族基礎年金の受給額は、年額77万9300円(平成30年度に死亡した場合)です。遺族厚生年金は、亡くなった人の収入(標準報酬月額)が多いほど、遺族が受け取れる年金額も増える仕組みです。
また遺族厚生年金には、厚生年金の被保険者期間が25年を境に「短期要件」と「長期要件」に分けられます。短期要件とは、死亡時に被保険者期間が25年(300月)に満たなかったとしても、年金額が少なくならないよう25年加入していたとみなして年金額を計算してくれる仕組みです。一方、被保険者期間が25年を超えていれば、実際の被保険者期間で計算してくれるというのが「長期要件」です。

● 年収850万円未満は、遺族年金の受給対象
遺族基礎年金も遺族厚生年金も、「亡くなった人に生計を維持されていた」ことが受け取りの条件です。しかし、「扶養家族に入っていない妻は対象外」という訳ではありません。受け取れなくなるのは、前年の年収が850万円以上あった人。所得に直すと、655万5000円以上の人になります。
夫の死亡退職金や生命保険金を受け取って一時的に収入が増えたとしても、継続した収入でないことを証明できれば、遺族年金を受け取れる可能性があります。
一方で、次のような実例もあります。
会社を経営していたご主人が亡くなった時には会社の業績が良く、900万円を超える役員報酬を取っていた奥様は遺族年金をもらえませんでした。ところがその後、会社の経営が悪化して役員報酬が200万円台まで落ちたので、年金事務所で遺族年金の相談をしましたが、受給は叶いませんでした。夫が亡くなった時に受け取れない条件だと、その後も受け取れない可能性が高いようなので、注意が必要です。

● 配偶者の所得が基準を超えていても、子どもは国民年金の受給が可能
ここからは、遺族年金の受給に関して、いくつかの例を挙げて説明します。
(1) 「遺族基礎年金」がもらえるのは、配偶者と18歳未満の子どもです。配偶者の年収が850万円以上で年金を受け取れない場合でも、子どもに遺族基礎年金が支給されます。

(2) 夫が亡くなった時に40歳以上で、かつ18歳未満の子どもがいない妻は、遺族年金の受給が終了したのち、自分名義の老齢年金が受給できるようになる65歳まで「中高齢寡婦加算」を受け取れます。ただし、妻の年収が850万円以上だと支給されません。

(3) 中高齢寡婦加算を受給している妻が65歳となり、自分名義の老齢基礎年金を受給するとき、受給額が少ない場合は「経過的寡婦加算」が上乗せされます。ただし、受給する時点で年収が850万円以上だと受け取れません。

(4) 働いていた妻自身の老齢基礎年金は、遺族年金ではなく自分の年金の受給権ですので、受給する時点で年収が850万円以上あっても必ず受け取れます。

(5) 遺族厚生年金と自分(妻)の老齢厚生年金の両方をもらうことは、原則としてできません。ただし、65歳以降で遺族厚生年金を受給する権利がある場合、せっかく納めた厚生年金保険料が無駄にならないための特例があります。特例が適用される場合、夫の遺族厚生年金の3分の2と、自分(妻)の老齢厚生年金の2分の1を組み合わせて受給できます。

遺族年金の種類や支給金額は人それぞれで、請求には時効もあります。万一の場合には早めに年金事務所または年金相談センターに相談してみましょう。また、遺族年金は受け取れる金額や期間が決められているため、一家のライフプランで見込む収入との差額は必ず準備しておきましょう。


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